研究分野と研究課題


研究分野

免疫学、 アレルギー学


利用者の期待に応える健康補助食品創出の意義と研究課題 

医薬品は治療上極めて緊急性の高い急性疾患に必要なものと、慢性疾患の治療に必要なものとに分かれている。慢性疾患には長期間に渡って使用可能な安全なものが望まれる。そこには遺伝子治療、モノクロナール抗体などによるターゲット治療はいらないと考える。

そこには伝統的に使われて、緩叙に作用するが、確実に効果の発現が見られる自然薬(天然薬効性物資)の利用に期待が寄せられる。生薬の中にはもっぱら医薬品として漢方薬などに使われる生薬、あるいは、生姜、高麗人参など食品としても利用できる生薬類がある。

 

現在、日本国内では西洋ハーブ類などを含めると多くの生薬類が食品として使用できる状況にある。そこで、これらの生薬、生薬エキスを巧く組み合わせると、十分に薬理学的活性を持つ、即ち治療効果が期待できる健康補助食品を創出できる事になる。この様な商品の開発は経費が節約でき、販売までの時間も大幅に短縮できる利点がある。食品で構成されているので、安全性研究に時間を掛ける必要性がないなども有利でもある。

 

加齢に伴い多くの人は関節などに、炎症、疼痛を示し、慢性化した疼痛に悩まされて居る。この疼痛、炎症を対象にした健康補助食品は既に私の手によって開発されて、有効性に関しても人で確認され何人かの臨床医は既に使用している。この様な健康補助食品の臨床研究は食品であるが故に比較的実施し易い一面を持っている。現在、腎機能を改善する医薬品、あるいは健康補助食品は殆ど無いので開発の機会は十分にある。

 

最近ではまた、キノコを利用した健康食品が市場に出回って良い面、悪い面と色々取り沙汰されているが、これは正確に科学的検証が為されていないところから起こる問題である。

猪苓、茯苓などのキノコは漢方薬でも使用されている。健康食品で使用されているキノコに薬効が無いと言う事ではない。キノコは分類学的には真菌類に属し、いわゆる微生物の仲間でもある。真菌の抗原は免疫細胞に認識され、免疫監視機構を刺激することから腫瘍免疫機構を刺激して腫瘍の退縮に関与する事は十分に考えられる。キノコの健康食品について見ると、先にも述べた通り、余りにも科学的情報に乏しい。臨床研究を実施したくても、キノコ健康食品の抗腫瘍活性に関するデータが無く臨床研究を企画する事さえ出来ないのが現状であろう。従って、キノコに関する基礎研究が求められている。キノコは抗腫瘍性ばかりではなく、生活習慣病の予防、治療にも有効である可能性がある。

 

最近注目しているキノコに樟芝(ショウシ)と言うのがある。これは台湾特産にキノコで台湾の保護樹木となっているクスノキの一種である牛樟樹に寄生、生育する。台湾では伝統的に民間薬としてウイルス性肝炎、毒物肝炎、消化管腫瘍など用いられている。実験的に効果を調べたところ、肝障害モデルで強い肝保護作用が確認され、抗腫瘍、肝障害抑制に関与する有効物質を同定する事ができた。臨床効果を調べるために、血中のGOT, GPT或いは中性脂肪の値の高い脂肪肝のイヌを治療したところ、それらの数値の改善を認め、極めて興味ある結果が得られた。今後の研究が期待されるキノコである。生活習慣病、即ち糖、脂肪など物質代謝異常を示す疾患の治療には代謝機能の中心を為す、肝機能の改善は不可欠であり、この観点から樟芝を利用した健康補助食品の開発は意義深いと考えている。

 

その他、中枢神経の加齢に伴う機能低下、認知症の発症、男性機能の低下、更年期障害など、また複雑な社会環境からのストレスの緩和などは国民的関心事で、これら生理機能の錯乱、低下の抑制、改善効果を示す有効な医薬品、健康補助食品の開発が望まれている。